2011年3月9日水曜日

抗マラリア薬のハイドロキシクロロキンについて (SLEへの適応)

「ハイドロキシクロロキンという、ヨーロッパでもっとも使用されているSLEに対する薬を日本では使用できないんですよ。なんでだとおもいますか?知りたい人いる??」

からはじまった、Twitter。まとめました。
クロロキン事件っていうのがあったんですね。じつは我々の先輩もリウマチやSLEの患者などに使っていた経緯がある。吉富製薬がこれを「レゾヒン」です。劇的な効果があるわけではなかったんだけど使用した。かつて薬害エイズなんかや、現在のイレッサのように薬害が報告され始めた。その薬害は失明。

最近のハイドロキシクロロキン「プラキニル」では一年に一度の眼底検査を行えば初期のうちであれば失明することはない。英国では3年に一度くらいしか見てないと思う。だけど当時日本で障害がのこった患者が1000人を超えていた。

なおかつ、保険適応外で使用していたので(慢性腎炎という病名??)大変おおきな社会問題になった。実際、いまでもエンドキサンなんか保険適応になってないし、我々の膠原病の世界では保険適応以外の薬剤を使わなくてはいけないことも多々あるので、そんな感じで使っていたのでしょう。

そのため日本ではクロロキンをSLEに使用することはできなくなった。しかし世界的に見てもハイドロキシクロロキン(HCQと訳すんだけど)は妊婦にも安全といわれていて、我々のPregnancy Clinic(妊娠外来)ではほぼ全妊婦さんが内服しているくらい。本当に安全な薬なんです。一部のSLEの患者さんはステロイドを中止してHCQだけ内服している方も多数いる。かなりマイルドな薬でこれだけでSLEを治療することはできないけれど、治療薬のステロイドの減量には役立っていると思う。


では、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品 )として再認可されたサリドマイドのように復活させることはできないか?


HCQをオーファンドラッグとして復活させることはちょっとむりかなあ。重症のSLEとして患者さんが少ないことを強調するばいいという先生もいたけれど、そもそも重症のSLEにこ の薬はききません。むしろミコフェノール酸モフェチル(MMF)のSLEへの適応拡大の方が急務。このMMFはかなり初期治療としても使用されつつありますが、いかんせん日本では移植にしかつかえない。まあ、シクロスポリンとかFKが一般の膠原病治療薬として使えるようになったので、このくすりはすぐに日本のSLE治療のスタンダードになるんでしょうね。


ひさびさまじめなTweetでした。ww

2011年2月23日水曜日

在宅などいろいろ

  もう10年近く前の話だから変わっているかもしれないが、在宅時医学総合管理料なんかの、在宅管理料について。月に2回往診すれば病院に4200点、すなわち42000円が入るっていうシステム。結構これは問題だと思った。馬鹿高いからだ。在宅管理料ってなにかっていうと(まちがってたら誰か訂正して)まあ、厚生省は病院に入院している患者が多いから外に出したいわけで、外来で一生懸命見て くれるクリニックを増やすためにそういうシステムを作った。もちろん、その方針は私は同意するし、いい方向だと思うがいろいろ抜け道があって、高齢者では誰でも算定できるのではないかと思ってしまう。褥瘡なんて軽度ならよくあるし、通院が困難って認定しちゃったらそれも往診しか見れないと言い訳のように使用できてしまうからだ。

参考) http://www.e-rapport.jp/law/fee/fee6/06.html

         http://www.asahi.com/health/news/OSK201012170006.html

 

いまの医療費なら内科のクリニックでも25人くらいはみないときっとクリニックとしてはやっていけないでしょうね。まあ、これくらいみなさい!というお達しといえばお達しですね。でも、リウマチ患者さんや重症な糖尿病の患者さんだったらもっとじっくり見たいですよ。いままでのように少ない患者さんでもやっていけた病院がつぶれはじめたのが10年くらい前から徐々に増えてきた。開業医医師の給料はこのとき激減したわけです。しかしさらに薬の薬価差益というもうけもそとに出しましたので、ここからの収入もないわけです。私はそもそも高すぎたという意見には同調します。適正な給料っていくらくらいなのでしょうね。まあ、そんなわけでこのシステムに飛びつきたい病院はかなりあったと思う。
話しは戻りますが、厚生省はベッドを減らすために在宅で患者をみれる方法を考えたわけなんですけどむしろ自宅や療養施設に返せない患者さんて、多くは介護とか、看護が必要な人なわけですよ。治療よりもむしろ(それも治療というかもしれませんが)リハビリや日ごろの身の回りのお手伝いが必要なわけです。いまや欧米と同じように家庭で看護・介護できる人がいないから、退院させられない日本の状況が出来上がった。でも日本はここ20年くらいで急変したわけで欧米のように何十年もかけてそうなってきたわけではない。そもそも女性の人権が怪しかった日本ですから。まあ、急激に欧米型になってきたと言えばそうでしょうね。だから介護とか看護とかそっちの方にもっと力入れてほしいし、社会問題なんだからもっと国費を投入すべきなんです。それを日本は国民皆保険からの比率が高いのに払わない人が増えている。実際英国は皆保険じゃないけど税金から出すシステムを採用している。まあ取っている額は最終的におなじなのですが、国民は医療なんて関係ないのに払わされているみたいな感じはあるかもしれないですよね。

参照) http://www.geocities.jp/yamamrhr/ProIKE0911-73.html
(2)公的負担の内訳(図6) を参照

そういうのを飛ばして、まずは在宅総合管理料みたいのをつくった。つまり「家で見たら金やるよ」の論理で、まあ、書類だけでとおしたらとんでもないことになるから、まあ、月に2回は見に行きなさいみたいな感じなわけです。もうね2回以上見に行く人と、本当は月に一度でもいいような人までこれに当てはめようとする考えをする悪い人は出てくるわけですよ。この管理料を取るためには登録が必要で入院施設との連携が必要です。これは今までの医療の普通の病診連携なんて生やさしいものではなく、受け入れる病院の医師はもう覚悟を決めて待機してます。絶対引き受けなければい行けないというレベル。この、何かあったらいつでも入院できる施設を整えておくこと、みたいなルールがあるのです。我々病院で働いていた医師にとって、そのルールがあるならば開業医の先生にその点数をつけるのはいいだろうと判断していたと思います。かなり診療点数が高額ですから、しっかり患者さんのおみとり(お亡くなりになること)まで大変な仕事になるなあと思ったものでした。しかし、ここから医療を商売にしか考えていない輩が現れるわけですよ。ゲーム感覚なのかわからないけど。
そもそも老人ホームとか老健施設とか、道路や公共事業を行っていた会社が運営にまで関わってきたわけですよ。それはもうね、施設が足りないんだからしょうがないのはわかっています。これからはそちらの施設を増やさないと日本の老人医療は崩壊しますから、増やすしかない。


    そのこと自体はいいことだと思うし、もう日本は土木を守らないとしてしまいましたから、その技術が医療に来るのは全然問題ない。むしろ医療が活性化されれば土木も医療もプラスになるわけだから。北海道なんか特にそんな会社がたくさんあって、たくさんの会社が新規参入した時代があった。すばらしい会社も育っているわけです。でも、やはり始めはぶつかるわけですよ。


私だけじゃないと思いますが、もう介護とか看護とかじゃなくて、企業の考えは基本的に設けですからしょうがない。わかりますよ。企業なら設けてなんぼっていうのは。でも、医療はコストをおさえれば、患者のQOLが下がるのは当たり前なんですね。その折り合いが大事なわけで建物をつくるのはプロなのはわかるしさらに多角経営したいのはわかるけれどもよくぶつかりました。建設会社だけでないんですが、他にも食品会社やその他の中小企業がつぶれそうな病院を買ったりした時期もあったわけですね。そうするとそういう院長はもうお年の人も多いし、後に変に商売っ気がついちゃったり、助けてもらった感がすごくあったんです。あくまで私が数人見た人の話しですよ。自分のやってきた医療に自信なんてなくなってますよね。つぶれちゃったわけですから。人生変わりますよね。どちらが悪いとかそういうことじゃなくて、お互いが助け合えればそれはそれでいいんだと思います。まあ、勉強しなかった医師も悪いんだと思いますが在宅管理料の話題や、検査の粗利なんかを話しているのを先輩から聞くと、あんなに立派な先生だったのにっておもっちゃう私は昭和の医師ですかね。やっぱり。そして、施設の経営と病院側は事務長をおくりこんで、例の在宅管理料をとる。実際、ひとつの施設に複数人適応患者がいたら2人目からは割引がされて、管理料が半減されたんだけど、当時どんな方法をつかっているのかわからないけどうまくされないようにしていたりしてる(もちろん合法だと思いますよ)。そして老人ホームなんかに一回往診に行ったら数人見れるし、何件か回ったらもう管理料だけでものすごい桁になるわけですよ。そして病院に入ったらまあいろいろと税金なんかも面倒くさいのか、老人ホーム側にキックバックがされるわけですよ。これがまた違法じゃないんですね。本来保険で計算されている報酬を一般企業にキックバックしているわけです。保険で計算されているものは税金や国民の保険ですから点数は厚生省やお上の一人ですから私たちの介入できる場所ではありません。しかし、企業にキックバックするシステムを使えば、病院を赤字にしておくこともできるわけです。いろいろな税制上の逃げ道があったりするわけです。社会法人の抜け道とかね。

私はどうしてもこのシステムがゆるせなくて、はじめからキックバッ クを要求してきてうちと組みませんかなんてこと言われたから腹立ってことわったことがある。本当はこれは病院のためにはハイハイっていうべきだったのかな あ。そして話し合いをするときも会場は病院側が持つの当たり前みたいな風潮。本来もうかるのは施設なのわけですから、病院側もハイハイと聞いてはいけないと思う!
まあ、5年以上前のことだしいろいろと変わっていると思うけど、医療側にも負担がきたのか2,3年前にはこういうことを中心に行っている病院がつぶれていたのを記憶します。やっぱりたくさん管理料を加算できる患者を持てばいいっていうのは無理で、医師や看護師のキャパシティーってありますよね。私がある大きな病院の2次救急のお仕事をしているときに、在宅管理指導をおこなっている医師から肺炎の患者の要請があった。本来それは提携している病院に送るべきなんだけど、絶対入院適応な患者が医師もつかないで、手紙も持たないで来させるわけです。家族に聞くとここに行けと言われたと。私は、「おかしいですね、在宅管理料金をとっているのですからこういうときこそ主治医が往診してみるべきなんですけどね。」と、いうも家族も困った顔をしているので、とりあえず引き取った後に、その主治医に電話したら、後方病院に空きがないと。結局退院するまでそちらの病院には引き取っていただけず、私が主治医になりましたけどね。在宅管理料とらないで(笑)よく話をきいたらそんな管理料のことはしらないと。毎月1か月に2度来ているのかもしらないと家族は申されていました。とにかくこのモデルは失敗しているわけですね。まあ、適正人数まもって医師がオーバーキャパシティーにならないように調節しているんであればれば問題ないと思うんで、今どうなっているかは知りません。とにかくこのことはいつも腹が立つんで連続Tweetしてしまいました。
あ、ちなみに病院から老人施設へはらわれる名目はコンサルト料としたり、病院理事に人を加えたりしています。本来は施設から病院にコンサルト料金が払われて施設に指導するべき事かと思いますがね。まあ、新しいビジネスモデルっていう格好の言い方もできるのかもしれませんね。